杉井酒造

6代目蔵元、杜氏として

杉井酒造の創業は天保十三(1842)年、杉井本家から分家した杉井才助氏が高洲村(現・藤枝市小石川町)で商いを始めたことにさかのぼる。1842年は、日本では江戸時代末期徳川第11代将軍徳川家斉の時代であり、日本三名園のひとつ水戸偕楽園が造園された年。大陸に目を移せば中国は清時代、イギリスとのアヘン戦争が終わった年と印象的である。 酒造りは明治時代初期には始めていたと記録され、銘は明治中期まで『亀川』、大正期までは『杉正宗』。現在まで続く『杉錦』となったのは昭和初期に入ってからのことという。 現在6代目になる杉井均之助社長は2000年から自ら杜氏も務めている。

発酵力が決め手!!の仕込み水は井戸から

杉井社長曰く「発酵力の強い水だと思います」という仕込み水は、蔵内の井戸から引く。 深さ約30mから汲み上げるその水は、大井川水系からなるもの。酒米は兵庫県の『山田錦』と滋賀県の『玉栄』、地元静岡県の『山田錦』と『誉富士』。その他、一般米として県産の米を使う。

山廃、生酛で日本酒の美味しさを探究したい

「うちらしい切り口を考えようと。そうして造り始めたのが山廃と生 造りだったのです。」杉井社長はこう語る。 「これまでの酒造りの中では、『いい酒を造ることはいい吟醸を造ること』とされていたと思います。皆で綺麗で香りの高い吟醸にとびついたのですね。でも、吟醸造りが酒造りの全てではないはず。吟醸酒は日本酒文化の華で、今後とも大事にしていきたいと思いますが、精白歩合の高くない素朴で酸味のある山廃純米に、日本酒のもうひとつの良さがあるのではないかと思います。」

自然の微生物の働きを使った伝統的な造りの食中酒を!

日本の稲作と食文化の長い歴史と共に歩んできた清酒は「日本人が大昔から育て上げてきた一大芸術作品である」(坂口謹一郎著『日本の酒』)と言われる。 うまい酒を生み出すための先人の知恵と工夫が凝縮され、米と水、麹菌、酵母、乳酸菌などの人知を超えた自然の働きによって醸しだされる深い味わいの可能性。杉井酒造では、こうした自然の働きによって米から醸しだされるその深い味わいを実現した酒造りを目指す。その手段として大事にしているのが「生酛・山廃」といわれる自然の微生物の働きを使った伝統的な醸造方法と「熟成」の工程である。 雑味や酸味が多くなる原料米を磨かない酒造りと、生酛・山廃造りの組み合わせにより、野趣に富んだ複雑な味わいが生まれる。またこのような酒は熟成により味わいが深まる。 そして普段の生活の中で楽しむ酒として吟醸酒ほど高価にはならず、食事との相性も優れていることにも注目している。吟醸酒のような飲みやすさだけを求めるのではなく、飲み進むにつれ体に馴染み飲み飽きしない酒に共鳴する飲み手も多い。

全国的にも希少! 造り酒屋が作った本物のみりん『飛鳥山』

杉井酒造場では、焼津港周辺の水産練り物の原料としての需要に応えるため、大正年間にみりんの製造を始めている。みりんの醸造蔵元は日本全国で現在30社ほどしかなく、非常に貴重である。 みりん『飛鳥山』は、杉井社長のポリシーと、杉井酒造場の目指す酒造りが詰まった、魅力的な商品である。もち米・米麹・本格焼酎のみを原料として、古来の伝統的製法で造り、じっくりと熟成させた本みりん。エキス分が44度あり、餅米が麹の力で溶けて生じる自然の甘味と旨味が凝縮しているので、料理の際余分に砂糖を使用する必要がない。 麹・もち米共に80%と、みりんとしては精米歩合を高くする事によって、きめの細かい上品な味わいを実現。さらに、搾ったままの状態で活性炭素濾過や火入れを行なってないので、自然で奥深い甘みを持ち、麹に由来する栄養素も豊富なため、調味料としてはもちろん、デザート酒として、また梅酒造り等のベースとしても幅広く楽しめる。 県内のみならず、全国にこのみりんをつかった料亭や料理屋が数多くある。

フラグシップ酒は生酛造りの純米酒

自然の乳酸菌による酸味で雑菌を抑え、健全な発酵を促す伝統的な醸造方法「生酛」で仕込まれた『杉錦 特別純米酒 生もと仕込み』。60%まで米を磨き、9号系の静岡酵母を使って吟醸的な造りをしている。特に新酒時には、燗で吟醸的、麹様の香りも楽しめる。米の旨味が感じられ、酸味、苦味と辛味が絡み合ってキレのよい余韻がある。軽い口あたりなのにぐっと主張してくる酒らしい味わい。飲み込むにつれて味わい深くなる辛口酒である。

海外にも広がり始める山廃、生酛造りの酒

静岡型の淡麗な酒質の造りを基本にした生酛・山廃造りで、静岡県新酒鑑評会、平成28醸造年度において純米の部、吟醸の部ともに県知事賞(1位)を受賞。 生酛・山廃造りの酒は近年海外でも注目され、ニーズが増えている。その深い味わいから、食事との相性もいいといわれており、特に乳酸がたっぷり詰まっているチーズやクリーム系の料理との相性も抜群にいい。現在はオーストラリアに輸出しているが、今後は欧州・タイなども予定しているという。