神沢川酒造場

歌川広重の浮世絵にも描かれた東海道五十三次16番目の宿場町

北に富士山、南に駿河湾を望む由比町は、小倉百人一首の中で山部赤人に「田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける」と詠われた地と言われ、古くから東西の交通の要所として栄えた町。この古い歴史を持つ由比町は、駿河湾でしか獲れない桜えびの産地で水産加工業の盛んな町として知られている。 静岡県の真ん中に位置し、今なお東海道の古い町並みを残す由比町に、正雪の蔵元、神沢川酒造場はある。田圃もなく温暖な気候のこの地で、創業者望月金蔵・由松父子が清酒醸造を始めたのは大正元年(1912年)。現在は5代目の望月正隆氏。正隆社長は現在静岡県酒造組合の組合長でもある。

五感を研ぎ澄ませ伝統の技を駆使し最高の一滴を目標に

神沢川の水は急峻な山から一気に降りてくる。そのため、鉄・マンガン・マグネシウムなどをほとんど含まない、混じり気の少ない軟水である。それ故に「軽くて、まるくて、飲み飽きしない」軽やかな酒質のきれいな酒ができるという。 目標とする酒質に合わせて厳選する米は、『山田錦』なら兵庫県産、『吟ぎんが』は岩手県産などと、銘柄によって産地と精米歩合を決め使い分けている。平成17年からは静岡県開発の酒造好適米『誉富士』も使用している。 代表銘柄『正雪』は、静岡市が生んだ反骨の英雄として人気が高い由比正雪にちなんで、2代目蔵元望月由松氏が命名。時代に逆らっても正直に生きた江戸時代の気骨の兵法家・由井正雪の名に恥じないよう、甘・辛・苦・渋・酸の五つの味と上品で爽やかな香が調和した、盃が進むのみ飽きない酒を目指している。

酒造りは、麹造り。麹造りは、人つくり。

平成28醸造年度の造りをもって引退となった山影純悦杜氏の信条は 「酒造りは、麹造り。麹造りは、人つくり。蔵人も一から仕込みます」 19歳から酒造りの世界に入り、昭和36年、当時最年少の29歳で南部杜氏資格専攻試験に合格。昭和57年に神沢川酒造に来て以来、今日まで数々の賞を受賞している。 平成25年度『卓越した技能者』(通称『現代の名工』)に選出され、平成26年には、秋の黄綬褒章を受章。 山影前杜氏が酒造りの指揮を執り始めたその当時、酒造りの品質向上を目指していた県内の他の酒造会社にも、自身の持つ麹造りの技術を惜しみなく披露。「静岡型吟醸」を生み出す大きな力となる。その長きにわたる功績をたたえられての受章である。 そして信条のとおり、山影前杜氏は、早い段階から若い蔵人たちの育成に力を注ぎ、次代の『正雪』の酒造りを担う人材を熱心に育て上げた。

次世代に継承 ~次なるステージへ

入社5年目から杜氏を目指す決意を固めたという崎山氏は、15年にわたり山影前杜氏の薫陶を受け、その卓越した技に触れ、南部県外杜氏としての資格も持つ。麹担当の副杜氏を経て、平成29醸造年度から醸造責任者という形で酒造りの指揮をとっている。 大学では農芸化学専攻を先行し、その後食品循環資源の研究職として企業にも勤めた経歴を持つ。『challenge(挑戦)』から始まり、『advance(前進・進歩)』、『evolution(発展・進化)』と、『エボリューション』シリーズとしてこれまで毎年タンク1本づつ酒をリリースし、造り手としての成長ぶりを披露してきた。28醸造年度には発泡酒『SNOW』も発売。 進化・発展していく 『正雪』の酒にファンの期待は高まる。

フラッグシップ酒の特別本醸酒

バナナやメロンのような果実味溢れる香りとシャープに引き締まるキレが特徴の『正雪』の特別本醸酒。吟醸酒、純米酒もさることながら、卓越したクオリティがこの酒にある。味わいすっきりで、フルーティーな感覚を覚えるほど。 「飲み飽きせず、盃のすすむ酒」蒸米は和釜、麹は中箱の手作り。最後の一滴まで楽みながら味わってもらえるよう、徹底した品質管理を行っている。

世界が憧れる日本酒78に選出

2016年9月1日(ニューヨーク時間8月31日正午)、ワインの世界的格付けで知られるロバート・パーカー・ワイン・アドヴォケートが、世界初となる日本酒の格付け評価を発表。近年「SAKE」として評価の高まる日本酒。今回は同社のワイン評論家、マーティン・ハオ氏が、選りすぐった約800種の純米大吟醸酒・純米吟醸酒を一律の評価方式でテイスティングし、100点満点で採点。結果、78種類の日本酒に90点以上のポイントを付与。 その中で『純米大吟醸山影純悦』が92ポイントという高得点を得ている。アメリカでの評価に伴い海外への流通も増え、現在は5カ国へ輸出している。